名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「っ」


覚えててくれたんだ。


並んで歩きながらふとこぼされた言葉に、ぎゅっと胸が痛くなる。


そうちゃんはいっつも同じメーカーの炭酸飲料だった。


わたしはいっつも同じメーカーのココアだった。冷たい温かいの違いがあるにせよ。


……そんなところばかりが変わらない。


「美味しいよ」

「まあね」


頷いたそうちゃんがペットボトルをあおる。


ペットボトルとか缶とか、買った飲み物をあおるとき、大抵そうちゃんは少し顎を上向けて飲んだ。


なんとはなしに横目で見ながら、ふうふう冷まして、やけどしないようにわたしも小さく一口傾けた。


冷えた両手を温めるように、熱いくらいのペットボトルをぎゅっと握りつつ、ゆっくり大事に飲む。


甘いものを一気に飲むと喉が痛くなるしね。


そういえば、考えなしに一気飲みして、甘さが喉に絡んで思わず咳き込んだら、やっぱりありし日のそうちゃんに呆れた目で見られたんだった。


苦い思い出に若干眉根を寄せつつ、こくりとまた一口飲む。


ちらり、わたしを横目で見遣ってから前を向き直したそうちゃんが、静かに聞いた。


「寒いの?」
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