名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「いや待って駄目駄目食べないで! わたしの好物頑張って食べないで!」


ちょっと喜びそうになった自分が恨めしい。


好物だから! ね、わたしの好物だからしっかりしてわたし!!


伸ばされたお箸を必死でとめる。


む、とか唇をとがらせられても困る。


わたしのお弁当だからね。なくなったらわたしのおなかがすいちゃうじゃないか。


……それに、わたしが作ったなら、って言われると、いろいろ勘違いしそうになるからやめて欲しい。


分かったあれか、おなかがすいててまだ食べ足りないのか。


「おなかすいてるならおかわりして欲し」

「違う!」

「え!? 違うの!?」


盛大に突っ込まれてびっくりした。

い、まで言わせてもらえなかった。


じゃあまさか、わたしの思い違いとか勘違いとかじゃなく、……そうちゃんは、わたしが作ったものが食べたかったのだろうか。


いやいやいや、ないないない。それはない。


……いや、えと、ない。ないはず、……ある、のかな。


仮にそうだとしてもあげられないし。卵焼き食べたいしわたし。


……えーあー、どうしよう。


よし、思いの外照れちゃって顔が熱くて赤いのは気にしない方向でいこう。


「唐揚げ食べる?」

「……ん、食べる」


ぱく、とわたしのお箸から唐揚げが消える。


「で、カツちょうだい」

「ん」


ぱく、とそうちゃんのお箸からカツをもらった。
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