名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
ん、じゃ分からないから。分からないからね、そうちゃん。


ココア渡して、じゃないだろうしえっと、……えーっと。


違ってたら恥ずかしいなあ、違ってなくても恥ずかしいなあ……。


内心うんうん唸りながら、おそるおそるココアを持っていない左手を出すと。


右手でやっぱり無造作に掴んだそうちゃんは、ちょっと考えて、つないだ手をポケットに突っ込んだ。


「えっと……?」


混乱、する。


「俺は暑い。から、ちょうどいい」


いやちょうどよくないよ。


俺は暑い、って確かにあったかいけど。ぬっくぬくですけど。


説明を求めてオレンジ色の横顔を見つめたのに、意味不明な返事が返ってきたものだから、余計に混乱する。


えーっと。


えーっと。


「……う、うん。そっか」

「うん。そう」


よし、放置だ放置。放置しよう。


これ以上考えるとどうにかなってしまいそうで、あれこれ考えるのは早々に諦めて、顔が赤らむのを必死に抑えることに専念する。


今は平静を取り繕う方が大事だ。


赤くなったらきっと、そうちゃんは手を離しちゃうから。
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