名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「ほんとに、おわ!?」

「っ、馬鹿!」


ぐい、と腕が引かれる。


信号が赤なのに気づかなくて、赤信号を渡ろうとしかけていたのだった。


「ごめんありがと、びっくりした……」


いまだに心臓がうるさい。注意散漫、駄目絶対、危険。ほんと危険。


こんなに一気に危ない目に遭ったのは初めてだ。

普段はこんなにあほな感じに抜けてはいない。ほんとに。


「俺もびっくりした。馬鹿なのアホなの何なの、美里毎朝こんなんなの」

「えっと」


本気で心配しているらしいそうちゃんに、怖い顔で詰め寄られる。


「帰りは転ばないのに、なんで朝だと転ぶの」

「ええと」

「俺が知らないだけで普段もこんなに危ないの?」

「いや、そんなことないよ、です」


怖い。そうちゃん怖い。


思わず丁寧にするくらいには、ものすごく怒っていらっしゃる。


心配がこうじて怒っていらっしゃる……!


「美里」


低く抑えた声に返事をする前に、わたしの右手がさらわれた。
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