名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
じわりじわり、体温が混ざっていく。


つないだ手のひらから、冷えた指先、手の甲、手首。触れあうぶんだけ、順に温もりが巡っていく。


手が同じ体温になった。それでもつないだままだ。


緊張する。


緊張、

あああ汗! 汗かきそうわたし、引っ込んで、お願いだから引っ込んで手汗……!


なんでこの暑いのにあったか~いなんて選んじゃったんだろうわたし、いや暑いのは手をつないでるからで、というか冷たいのを選んだら多分手をつなげてないけど、でも。


でも……!


悶々とする心境を大好きなココアを飲んで誤魔化しながら、とにかく必死で無表情を繕った。

手汗がひどいからとか挙動不審だからとかいう理由で離されたら嫌だ。


ねえ、そうちゃん。


もしかしなくてもさ、わたしのことなんか、なんとも思ってないよね。


なんとも思ってないのに手をつなぐのは、ずるいよ。


これだから困るんだ。これだから好きになるんだ。


どきどきして、振り回されて、好きが募っていく。


そうちゃんは距離が近い。

わたしじゃなくても、女子でも男子でも、誰にでも距離が近い。


だからわたしは特別じゃない。


そんなこと分かってるけど、嬉しいのはいいよね。喜ぶくらいいいよね。


お互いに黙ったままで、ただひたすらに足を動かす。


そうちゃんにとってはいつも通りの無言にすぎないんだろうけど、わたしの心臓はずっとうるさく音を立てている。


つないだ手から伝わらないといい。


結局手汗はどうにもならなかったから、せめて心音くらいは。
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