名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
赤くなりそうなのをこらえるべく、眉根を寄せて顔を固定すると、しかめ面を勘違いして焦ったらしく、手が伸びてきた。


「えっと何だっけ、頭ぽんぽんして髪くしゃくしゃにすればいいんだっけ」

「え、絶対違うそれ、ちょっ」


と待って、を言い終わる前に実行された、なんだか危ない女の子扱いは、やっぱり全然女の子扱いじゃなかった。


べちんべちん、と頭の上で跳ねた大きな手の平に若干殺意が芽生えつつ、痛みで目を白黒させていたら。


がさっ、とか乱暴にも程があるほど適当に再びのった手の平が、その節の高い指先でわたしの髪をかき混ぜる。


勢いよく前に降ってきた髪で視界をふさがれてはっとした。


「わああぐしゃぐしゃじゃんばか、ストップストップ!」

「えー、ぽんぽんしてくしゃくしゃしたのに」

「ぼすぼすしてぐしゃぐしゃしたの!」


騒ぎながら、そうちゃんを真似て大きく手を上下させると、まるでそんなことはしてないから俺、と言いたげに眉が寄ったけど、絶対こうだったよ。絶対。


そうじゃなきゃ、こんなに髪がぐしゃぐしゃのぼさぼさになるはずがないじゃないか。
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