名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
影が落ちる。


先ほどとは段違いに優しい動きでわたしの頭をぽんぽんしたそうちゃんは、誇らしげにわたしを見遣った。


「どう?」

「……下手」

「えー」

「髪くしゃしてないし」

「だってよく分かんないし」


崩さないようにってそんなの無理だろ、と言いながら、考えあぐねているのを示すように、わたしの髪をなんとはなしにすいている。


……そうちゃんの指が通る度に気になって仕方がないからやめて欲しい。あと近い。


なんでそこでわたしを覗き込むんだ……!


距離を測っているのだろうか。

それとも、崩さないやり方を考察しているのだろうか。


真剣なまなざしは、その瞳いっぱいにわたしを映している。


「……よく分かんないなら諦めれば」


とりあえず、もう照れを押し隠すのも限界だったので、わたしはことさらに声を張って抗議した。


「ていうかね、暗い!」

「あ、悪い」

「まだ暗い!」

「はいはい」


一歩下がったそうちゃんに合わせて、わたしも一歩離れた。


……くっそう、顔赤くなってたらどうしよう。


そしたら夕焼けのせいだもんね。


決して照れてるわけじゃない。ないったらない。
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