名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
そうちゃんはきっと、わたしを女子としては見ていないんだと思う。


いやもちろん女子って認識はあるんだろうけど、なんというか、いつもは頭のすごく隅の方に追いやられていて、改めて強く意識しないと、女子だとは思い出さないんだと思う。


だってわたしは多分、女の子扱いをされていない。


放課後隣を歩いてくれるのは、一緒に帰る人でいられているのは、決してわたしが女子だからではなくて、そうちゃんの幼なじみだからだ。


……それから、少しの惰性と習慣。

もう考えるまでもなく、放課後だ、ああ一緒に帰ろうって慣れがお互いに染みついているから。


わたしはそうちゃんにとって、おそらく女子である前に幼なじみなんだろう。


……あまりに昔から隣にいて、あまりに最近疎遠で、あまりに一緒に帰る放課後を繰り返しすぎて。

あまりに、いろいろが欠けているから。


佐藤美里っていう女子じゃなくて、佐藤美里っていう幼なじみ。ついでに女子。

そんな感じ。


そうちゃんの幼なじみの定義には性別も顔もない。もしかしたら名前もない。


共通の思い出を持っている人、それだけ。


だからそうちゃんはわたしの名前を呼ばないのだろう。


だからわたしは恋愛対象として見て欲しくなるのだろう。


だからわたしは、そうちゃんの隣にいられるのだろう。
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