名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
お互いを「そうちゃん」「美里」と呼ぶようになったわたしたちを見て、お母さんとおばさんで何やら話し合ったらしく、わたしもそうちゃんも、美里、奏汰と呼ばれることになった。


わたしがそうちゃんと呼ぶのに遠慮しているらしい。


まだ慣れないのと、透ける心遣いとでくすぐったい。あと恥ずかしい。


でもこれで、そうちゃんをそうちゃんと呼ぶのは、わたし一人だけだ。


二人はそうちゃんにも、わたしをみいちゃんと呼ばせようとしてくれていたけど、そうちゃんが乗り気じゃないのでやめてもらった。


呼ばれたら嬉しいけど、強制されたからって仕方なしに呼んで欲しいわけじゃない。


みいちゃんという呼び名は、今はもう誰も使っていない呼び名だ。大切な宝物だ。


心のこもらない思い出より、心のこもった今がいい。


「でも、みいちゃんって呼ばれてみたいよねえ……」


願望は、秘めたつもりで呟いていたらしかった。


「……そういうのは早く言いなよ」
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