名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「うわあ!?」


不機嫌に落とされた言葉に肩が跳ねる。


放課後、いつものように、そうちゃんが来ていたのだった。


「え、え!? わたし言っちゃってた?」

「普通に言ってた」


え、うわあ、うわあどうしよう。どうしよう……!


「行くよ」

「え、あの、そうちゃん……!」


固まるわたしの手を引いて、そうちゃんは早足に教室を出た。


黙り込んだまま階段を下り、昇降口を出て、帰路に着く。


自販機でココアと炭酸飲料を買い、混乱しているわたしにココアを押しつけて、しばらく歩き。


「なあ」


オレンジ色に濃い黒が混ざり始めた頃、ぽつりとわたしを呼んだ。


「う、ん?」


ココアをちびりちびりと傾けて、返事をする。


そうちゃんはこちらを見て、前を向いて、口を開け閉めして。


ゆっくりゆっくり、引き結んだ唇を開いた。


「……美里はさ、みいちゃんって呼ばれた方が嬉しいの?」
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