名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「佐藤美里、いますか」


張り上げたわけではないのによく響く声がした。


勢いよく振り向くと、思った通り、教室前の入り口にそうちゃんが立っている。


……教室に来るなんて珍しい。なんだろう。


きっとそんなに大した用事ではないとは思うのに、どこか期待をする自分もいて、勝手に心が浮かれていく。

少し鼓動が速まった。


ちょっとごめんね、と話していた友達に断って足早に近づく途中で、そうちゃんもわたしを見つけたらしい。


さ迷っていた視線が合って、「あ、いた」と小さく口が動くのが見えた。


がやがやうるさい教室から離れて、静かな廊下で向き合う。


そうちゃんは古びて薄汚れた壁にもたれて待っていた。


……くそう、かっこいい。


気だるげに寄りかかるのなんてただの仕草なのに。


ささいな仕草までもがなんだかきらきら神々しく輝いて、とても眩しくて、おまけにかっこよく見えるなんて重症だ。


そうちゃん大好き病。


病因はそうちゃんで、処方薬もそうちゃんに違いない。
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