名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
そもそも、設計した人は何を考えていたんだろうか。


この学校で過ごしてきて何度も考えさせられることだけど、多分設計者は抜けている。


コンセントプラグの位置が絶妙に遠くて、扇風機とか加湿器とかつけたいときにちょっと困るし、こんな駐輪場だし。


それか多分、恋とか友達付き合いとか考えてくれなかったんだろう。


だって、武骨な自転車を見たって何も会話が弾まないよね、なんて不毛なことを考えつつ、お昼ご飯を食べ終えて、ココアを飲みながら友達と話していたんだけど。


「あ」


駐輪場をぱっと人影がよぎった。


垣間見えたその人は、可愛らしくて人好きのする顔立ちの女の子。


女子、というより、女の子。


まさに、優しくて可愛くてふわふわして、甘やかなレースやリボンが似合って、にこっと笑うとえくぼができたりして、色白で目が大きくて、ちょっと小柄で華奢で守ってあげたくなるような、可愛い女の子を凝縮したらこう、という感じの雰囲気の女の子だ。


いや、そんなにはっきり見えたわけではないから、実際はだいぶ違うかもしれないけど。


でも、ぱっと見のわたしにそんな印象を抱かせるくらいには、随分と可愛い人だった。


そんな可愛い女の子が泣いて走り去った、ということは、結びつくのは当然修羅場だろう。

少なくとも恋愛関係であることは間違いない。


……うーん……。


黙って後ろ姿を見送る。


本当に、この学校は恋する人々に優しくない、と常々思う。
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