名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「ああ、あれ振られたんだね」

「別れたのかもよ」

「結構可愛かったけどねー、なんでだろうね」

「性格悪かったとか?」

「あー……ありそうありそう」


恋バナは楽しいものだ。


勝手な憶測がどんどん飛躍していく。


あの女の子は多分、よほどショックだったんだと思うけど、頑張って行き方を選んだ方がよかったんじゃないかなあ。


なまじお昼休みにこちら側を通ったものだから、なんとなく外を見ていた目撃者は大勢いるだろうし、その中には恋バナしたい人も大勢いるだろうし。


きっと、いろいろなところでいろいろな噂をされてしまっているだろう。


この学校では、駐輪場に面して第二体育館が建っている。


その第二体育館の裏は、教室からも部室棟からも、どこからも見えない絶好の、唯一の告白スポット。


体育館裏というだけで、夢見る乙女に人気なのだ。


電話とかお店とか帰り道でとか、そういう告白が嫌な夢見る乙女に、現実は厳しい。


この学校には、二人きりになれる場所がほとんどなかった。


直接、しかも学校で告白したいなら、ここしかない。


教室も空き教室も大抵おしゃべりや勉強をする人がいるし、屋上は解放されていなくて入れないし、部室棟は鍵がかかっていて、部活前に職員室で名簿に名前を書いて鍵を借りるシステムだから、告白しには入れないし。


となると必然、そんなロマンチックな告白場所なんて限られてしまう。


本当、恋する人々に優しくない造りをしている。


……本当、恋する人々に優しくない造りをしている。
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