名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「…………」


いつもの時間になってもそうちゃんが来ない。


こういうときに、わたしたちはただの幼なじみなんだって当然の事実が、ふいに胸を突く。


そうちゃんが続けてくれているだけだ。

絶対に来てくれると約束しているわけでもない。


だけど、放課後の教室にそうちゃんの姿が見えないのは、やっぱり寂しい。


そうちゃんにもそうちゃんの予定がある。

今までたまたまなかったり調整したりしてくれていただけで、来られないときだってあるだろう。


うーん、でも今ならまだかろうじて明るいから、一人で帰るなら今帰らないといけないんじゃないかなあ。


……どうしよう。


悶々と頭を抱えた結果、そうちゃんに会いに行くことにした。


教室をぱっと確認して、いないようなら帰ろう。

いたら、一緒に帰ってくれるか聞こう。


そう決めて、揺るがないようにできるだけ固い決意を固めてから、そうちゃんの教室に行く。


そっと様子をうかがおうとしたところで。


「あ、佐藤くんの彼女さん!」


ちょうど教室から出てきた女の子に、なんだか意味不明な呼びかけをされた。


「え、あの、彼女じゃないです」

「照れない照れない」

「照れてません……!」


わたわたと弁解しているうちに、「佐藤くーん、彼女さんが呼んでるよー」と声を張り上げられてしまった。


わああ、だからわたしは別に彼女じゃないって!
< 39 / 254 >

この作品をシェア

pagetop