名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
喧嘩してるわけじゃないけど、もう長い間、お互いの名前を呼んでいない。


いつからだったかな。

どっちから、呼ばなくなったんだっけ。


記憶がおぼろげな中でただ一つきちんと思い出せるのは、呼ばなくなったのはなんとなくだったってこと。


明確な仲違いはしていない、それだけは確かだってこと。


子どものわたしたちがお互いを呼ばない代わりに、お母さんとおばさんが懐かしい呼び名を使い続けている。


……そうちゃん、みいちゃん、ってお互いを呼んでいたのは、幼稚園の頃だった。


奏汰(そうた)だから、そうちゃん。

美里(みさと)だから、みいちゃん。


わたしがそうちゃんを呼ぶときは、口を大きく開けて。

そうちゃんがわたしを呼ぶときは、口を三日月にして。


いつもくっついて。仲良しで。


わたしの一番はそうちゃんで、そうちゃんの一番はきっとわたしだった。
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