名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
そうちゃんはぱっとこちらを見てわたしを認めると、一言二言一緒にいた友達に断って近づいてきた。


「何。どうしたの」

「……ごめん」


彼女だなんて不遜な勘違いにわたしが耐えられなくて、用件を聞かれているのは分かるんだけど、答える前に思わず謝る。


「何が」

「なんか、彼女とか言われてごめん」


さぞや迷惑だろうと肩身の狭い思いでいたら、「別にいいよ」と寛容な答えが返ってきた。


「というか、俺がそう言ってるし」


……ん? え?


えええええ!?


一瞬、意味を理解し損ねて頭が真っ白になった。

なんとか理解した今もやっぱりうまく飲み込めない。


固まったわたしにうっと詰まり、口ごもったそうちゃんは、いや、ほらあの、と明後日の方向を向いた。


「……なんかみんな彼女だって思ってるみたいだったから、いちいち幼なじみって訂正するのもめんどくさいなーって放置した」


なんで放置したの!? なんで!?


「訂正しよう! しよう!? そこは!」


これはあれか。まさかそうちゃんのせいか。


否定しても否定しても毎度毎度、分かってるって照れてるんでしょ恥ずかしがってるんだよね愛いやつめ、的な含み笑いでからかわれるのは、そうちゃんのせいなんだろうか。


なんだかそう考えるとしっくりくる気がする。


いや、ええ?


えええ……!?
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