名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「この人もう帰ったから」

「うん」


急な断りによく分からないまま頷くと、そうちゃんは前の席をくるりと回転させて、そうちゃんの席と向かい合わせにした。

鞄はわきにかけられている。


ああ、気にしないで座ってってことか。鞄はひとまず膝の上に置いて、そうちゃんの向かいにわたしも座る。


机と机をくっつけた境目に、何やら教室の隅から持ってきたらしい資料を積むと、どん、と重みに鈍った大きい音がした。


崩れそうな山の大きさに目をむく。なるほど、これは終わらない。


「荷物はそのへんに置いて。十枚で一人ぶんね。一応ページの確認もして」


こんな感じ、ともう作ってある見本と大体同じところに、パチンパチン、とそうちゃんが二回ホチキスの針を刺す。


「で、ここに積む」


ぎっ、と足で引き寄せた隣の席に完成品を移す算段らしい。


「予備の針はここ」

「うん」


そうちゃんは針が入っているのを確かめてから、ホチキスをわたしの目の前に滑らせた。


「了解?」

「了解」


あとはもう必死だ。
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