名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
夕日に染まるそうちゃんが、わたしは一番好きだ。


さらっさらの黒髪が、明るい茶色がかって見えるのも。


どうやってるのか分からないけど、なんだかかっこいい着こなしの制服も。

だけど、ちょっと下手な結び方のネクタイも。


粗雑に扱うから最近ますます不格好になってきた、大きな靴も。


たくさんたくさん見てきた、一番好きなそうちゃん。


染めないことって校則で決まってなかったら、さらさらの髪を本当は染めてみたいらしい。

茶髪にしたいと言っているのを廊下で聞いた。


なんだかよく分からない着こなしは適当に違いない。だってそうちゃんだし。


下手な結び方でおざなりに片づけられているかわいそうなネクタイを、本当は結び直したい。

不器用なのは知ってるけど、ちょっとひどいんだよね。


日に日にぼろぼろになっていく靴は、足の大きさが変わらなければ、結局三年間履き続けるんだろうな、と思う。

粗雑に扱うくせに、どうしてか物持ちがいいから。


……ああ、好きだなあ。


いつもとおんなじこと。

いつもとおんなじ距離。

いつもとおんなじ無言。


オレンジ色のそうちゃんは、今日もしゃべらない。
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