名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
先生を探して、扉の半分くらいの大きさの窓から職員室内を覗き見る。


もう遅い時間だから、帰り支度をしている先生もちらほら見える。

帰宅したらしくて、あいている席も結構あるみたい。


今さらのようにどの先生なのか聞いたところ、おじいちゃん先生だった。


生物の先生で、なんか偉い……わけではないと先生本人は言っているけど、とにかくその道ではそこそこ有名人という話だ。

退職してからもう一度雇われている。


おじいちゃん先生は機械に弱いらしくて、機械を使うもので困り果てると、近くにいる先生たちか生徒たちに頼む。


まだしも自分よりは機械に慣れていて使えるだろう、ということらしいんだけど、まあうん、ええと、その通りじゃないかなあと思う。


おじいちゃん先生は本当に機械を使うのに慣れていない。


今回そうちゃんがこんなに近くなってから頼まれたのも、ぎりぎりまで自分でどうにかしようと奮闘していたら、コピー機に紙を詰まらせたり両面印刷がうまくできなかったりしたらしい。

他にも盛大に失敗してしまった挙句、別のお仕事の締め切りが急に繰り上がってしまい、わたわたした結果、通りかかったそうちゃんたちに慌てて依頼した、とのこと。


いつもの話である。


「いた?」

「いた」


行ってくる、とすたすた歩いていったそうちゃんを廊下で待っていると、しばらくして、おじいちゃん先生とともにひょっこり戻ってきた。


「ただいま」

「うん。おかえり」


手招きするそうちゃんに駆け寄る。


どうしたんだと思っていると、おじいちゃん先生が手のひらをわたしに開いてみせた。
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