名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「佐藤さん、行こう」
「うん」
昇降口を出ると、肌寒い風がばさりと髪をひるがえしてすぎた。
アスファルトに落ちる夕日が少し鋭い。
乱反射するオレンジに目を細めながら、同じ歩幅で隣を歩く。
わたしは一人のときよりほんの少し早く、そうちゃんは一人のときよりほんの少し遅く。
二人で歩くときの速さはお互いの中間ほどで、ちょっとずつお互いに合わせるようにしている。
特に意識しなくてもぴったり揃うくらいには、長い間二人で歩いてきた。
長く伸びた影の先が薄くなって重なるのをなんとはなしに眺めていると、そうちゃんがこちらを振り向いた。
「佐藤さん」
「ん?」
指差したのは例の自動販売機で、真っ赤な装丁が眩しい。
「寄っていい?」
「うん」
わたしが顎を落としたのを確認してから、そうちゃんはポケットから財布を抜いた。
わたしも買おうかな、とも思ったけど、よく考えたら一本飲み切れるほどには喉が渇いていなくて、後ろで黙って待機する。
ちらりとこちらを横目で見遣ったそうちゃんは、硬貨を押し込みながら言った。
「あれ、佐藤さんいらないの?」
「そんなに喉渇いてないかなって」
「そっか」
「うん」
昇降口を出ると、肌寒い風がばさりと髪をひるがえしてすぎた。
アスファルトに落ちる夕日が少し鋭い。
乱反射するオレンジに目を細めながら、同じ歩幅で隣を歩く。
わたしは一人のときよりほんの少し早く、そうちゃんは一人のときよりほんの少し遅く。
二人で歩くときの速さはお互いの中間ほどで、ちょっとずつお互いに合わせるようにしている。
特に意識しなくてもぴったり揃うくらいには、長い間二人で歩いてきた。
長く伸びた影の先が薄くなって重なるのをなんとはなしに眺めていると、そうちゃんがこちらを振り向いた。
「佐藤さん」
「ん?」
指差したのは例の自動販売機で、真っ赤な装丁が眩しい。
「寄っていい?」
「うん」
わたしが顎を落としたのを確認してから、そうちゃんはポケットから財布を抜いた。
わたしも買おうかな、とも思ったけど、よく考えたら一本飲み切れるほどには喉が渇いていなくて、後ろで黙って待機する。
ちらりとこちらを横目で見遣ったそうちゃんは、硬貨を押し込みながら言った。
「あれ、佐藤さんいらないの?」
「そんなに喉渇いてないかなって」
「そっか」