名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
ばくばくうるさい心臓に、お願いだから冷静になってよ、と言いつけて。

きっと、赤いのが丸分かりの顔を深くうつむけて。


「……飲む」


一生懸命通常を装って頷く。


「じゃあ、はい」


微笑んだそうちゃんの節の高い指が、差し出したわたしの両手にココアがしっかり収まるのを待って、ゆっくり離れた。


『よく振ってからお飲みください。』という表示を見ていなかったけど、緩く二回振ってから渡してくれたのは、わたしが必ず緩く二回振るのを覚えてくれていたのだろうか。


あんまり強く振ると泡立ってしまうので、慎重に二回振ることにしている。


それがわたしの一番好きなココアの飲み方で、ちょっとしたこだわりだった。


さりげない渡し方がもし覚えてくれていてのものだとしたら、こんなに嬉しいことはない。


「……ありがと」


込み上げるにやけを隠すべく、急いであおる。


あおって、あまりの熱さに火傷した。
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