名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
「っ、あっつい……!」


緊張してふうふう冷ますのを忘れていた。というか一気に飲みすぎた。


ほんの少しならこの熱さで飲んでしまってもまだ我慢できたと思うんだけど、あまりに勢いよく熱が喉を流れていって、我慢うんぬんの問題じゃない。

あったか~いというより熱い! 熱!! って感じ。


げほごほ咳き込む。


舌先がぴりりと痛い。喉が焼けている。熱い。痛い。


「わあああ、痛い……!」


涙目で深呼吸を繰り返す。


冷気が触れる度口内がひりひりする。


「ねえ……何してんの?」

「火傷しました」


呆れた表情のそうちゃんへの報告は涙声になった。


「いや、それは見れば分かる」


じゃなくて、と、涙目なわたしを切って捨てて、ものすっごい馬鹿を見る目をされた。


「何してんの? 馬鹿なの?」


……う。


ばっさり言われてうなだれる。


「違っ、……くないけど……!」


悔しいことに反論できない。


だって絶対馬鹿だ。

ココアを飲んで火傷って絶対馬鹿だ。


いまだひりひりする惨状を考えると、違うなんて言えない。


でも。でもだよ。


「大丈夫?」

「大丈夫」


ちょっと失敗したからって飲むのをやめるつもりはない。


だって、せっかくそうちゃんがくれたのに。
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