名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
今度こそ、と決意してボトルを握りしめ、しっかり冷ましてから慎重に一口飲んでみる。


好きな甘さがちゃんと適温で喉を通って安心した。


よかった。失敗しなかった。


二口めもしっかり冷ましてから飲む。


三分の一くらいまでゆっくり飲んでおなかがいっぱいになったので、残りはそうちゃんに返した。


「もういいの?」

「うん。いい」

「そっか」


渡したときと同じようにキャップを挟んで受け取ったそうちゃんの指先で、もて余すように緩やかにペットボトルが揺れる。


わたしの両手だと大きく見えるココアが、そうちゃんの片手の中にあると妙に小さい。


落ちてきた肩ひもをうるさそうに払って、もう一度もて余すようにココアを揺らして。


そうちゃんは少し考えてから、いつも炭酸飲料を飲むときみたいにあおった。


上を向いた喉ぼとけが鳴る。


「……あっま。ぬっる。どんだけ冷ましたんだよ」


うわ、と眉をしかめたところで、そうちゃんに気づかれた。


「……ねえ、なんで見てんの」

「なんとなく」

「いいから見ない」

「……うん」


甘い温い甘い温いと呟くそうちゃんに言われた通り横を向いて、無駄に意識してしまった。


……あああああ、もう、くそう。
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