俺は防水加工済み



 玄関を出たときに「かぶっとけ」といわれた。ばさりと頭からすっぽりと被せられたのは、濃い青のブレザーの上着である。
 ちょっと、といいたかったが彼が先にぐっと足を進めた。



「とりあえず、走るぞ」



 大きな手は私の小さな手を握って、前を走る。走るといっても思いっきりじゃないことくらいわかっている。博也が思いっきり走ったらこんなもんじゃない。私なんて置いていかれてしまう。微妙な速度で走る。しかし踏み切りでとまり、呼吸を整える。博也が、といいかけて「黙って着てろよ」と笑うから口を閉じた。

 なんだか、うれしい。

 同級生のカップルが、相合い傘をしてゆったり歩く横をかけぬける。なんだかおかしかった。


 雨が降っていて、私は頭からブレザーをかぶってお化けみたいになってて、博也はワイシャツと髪を濡らしながら走っているのだ。

 バス停に走り込んで、乱れた呼吸を整える。ふと見ればまずかったか、と先輩とその彼氏がいて、雰囲気ぶち壊したかなと申し訳なくなる。先輩とは部活が同じで知っているからまだマシだった。





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