Special coffee, with you.【番外編追加】
すると安藤さんが私の肩にそっと触れてきた。

「すいません、茉優さんと仲良くなって頂くことに好意が含まれると、嫉妬心から反対せざるをえません」

「安藤さん?」

突然何を言い出したのかと驚く私に、安藤さんは困った顔を見せた。

好意って・・・、そんなはずないのに。

後藤さんも驚いたのだろう、何も言葉にしない。

そんな中でも安藤さんが屈託なく話し続けた。

「大切なお客様同士が仲良くなって頂くことはとても嬉しいことなので本来なら温かく見守るのですが、茉優さんのこととなるとつい心が狭くなってしまいます。申し訳ありません」

「・・・あ、いいえ」

恐縮顔を見せた安藤さんに、後藤さんは戸惑いを見せて「・・あの」と遠慮気味に問いかけた。

「もしかしてお二人は・・・」

安藤さんと私を確認するように交互に見る後藤さんに、安藤さんは躊躇うことなく答えた。

「茉優さんは私の大切な人です」

「・・あ・・・そうですか」

安藤さんのストレートな言葉に視線を落としながら頷いた。

そして小さくため息をつくと、苦笑いを浮かべて見せた。

その顔を見て私はつい声をかけてしまう。

「あの、後藤さん・・」

「何だかすいませんでした。佐野さんも驚かせてしまいましたね」

「いえ、そんな」

「ずっと気になっていて、話してみたいなって思っていたんです。また話しかけてもいいですか?常連仲間として」

「はい」

私が頷いて答えると後藤さんは笑顔になった。

優しい笑顔で私も何だか安心することができた。

すると安藤さんが「オムライスが冷めてしまう前にどうぞお召し上がりください」と声をかけてくれて、私も目の前のお皿に目を移す。

「そうですね、じゃあ頂きましょう。すごく美味しそうだ」

後藤さんはそう言ってスプーンを手に取り、大きく一口分すくってパクッと食べた。

口元に笑みを浮かべて頷きながらもう一口食べる。

「うまい!」

機嫌良さそうに砕けた口調になったのを見て、私もつい笑ってしまった。

そんな私を見て後藤さんは私にも早く食べるように催促する。

「ほら佐野さんも早く食べないと」

「はっ、はい!」

慌てて返事をした私は、いつもならサラダから食べるのに後藤さんと同じようにオムライスを大きくスプーンで取り口に入れた。

口いっぱいに入れたせいでケチャップが口角に付いている。

ああ・・恥ずかしい、いい大人が。

指先で拭おうとしていると、後藤さんが笑いながらペーパーナプキンを差し出してくれた。

「すいません、ありがとうございます」

「いいえ」

と言いながら笑っている。

受け取って口元を拭ってからお水を飲んでフウ~と気を取り直す。
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