Special coffee, with you.【番外編追加】
「知りたい?」

「知りたいです!」

「う~んとね、准は学生時代もあんな感じだったよ。可愛くないの。頭もいいし、顔もいい。だから可愛くないのに女の子にモテていたよ」

「前原、言わなくてもいいことだよ」

安藤さんが止めようとするけど、私の興味心がそれを無視してしまう。

安藤さん、ごめんなさい。

「ほらー、准の可愛くないところがまた出る」

男の人で可愛くないって何だろう。

「可愛くないですか?」

「可愛くない、可愛くない。俺に冷たいし」

「冷たい?」

「冷たい、冷たい。茉優ちゃんに見せる笑顔なんか俺に見せないし。いつも早く帰れって俺を追い出す」

「いつも来ていたんですか?私会ったことないですよね」

そう、いつも来ているって言うけど私は前原さんに会ったことがなかったし。

いつ来ていたのかな?

「そうコーヒー飲みたい時はいつも来ているのに。お店に貢献しているのにさ、俺にだけ冷たい」

そう頬を膨らませながらプリプリ怒る前原さんに安藤さんがすぐに返してきた。

「それは前原だけが時間を気にせず来るからだろ?。朝は開店前から電話して来て朝食ねだったり、閉店しても気にせず来るから優しくする必要を感じない。歓迎もしていない」

「ほらね、冷たいでしょ?こんな男だよ、茉優ちゃんいいの?」

「いい・・・」

「気安く茉優ちゃんって呼ぶな」

私が「いいんです」と答えようとしたのに、安藤さんに遮られてしまった。

安藤さんもワイルドなとこがあるんですね。

普段見ることがない安藤さんを見て、つい胸キュンしてしまう。こんな言葉遣いの安藤さんもいいな。

そばに来て眺めている樹里ちゃんも、ニヤニヤと面白いものを見るような顔をしている。

「はいはい」と返事した前原さんは席を立つと安藤さんに向かって、「じゃあ俺はこの辺で帰るわ」と言って立ち上がった。

慌てて私も立ち上がり挨拶をしようとしたら、前原さんがまた小声で「あのさ・・」と話しかけて来たのでそれを聞こうと左耳を寄せると、「また今度准の昔話教えてあげるね」と言った。

そしてその直後、私の頬に柔らかい感触が伝わった。

え・・・なに?・・唇?

「へ?」

間抜けな声が出たところで「前原!」と安藤さんの声が響き、それと共に樹里ちゃんも「キャー!キスした!」っと興奮の声を上げた。

「やべえ、茉優ちゃんまたね!」

そう言って逃げるように帰っていく前原さんを、私はボーゼンとしながら見送った。


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