Special coffee, with you.【番外編追加】
カウンターから出て私のもとに駆け寄った安藤さんは、私の身体をギュッと抱きしめながら入口のドアを睨んでいる。

「まったく・・あいつは。茉優さん、大丈夫ですか?」

そう言って心配そうに私の顔を覗き込みながら、右手はゴシゴシと私の左頬を拭いている。

前原さんがキスしたところだ。

「・・・あの、安藤さん」

「もう前原は出入り禁止です」

むぅーっと眉間にしわを寄せて不機嫌な顔を見せた安藤さん。

「茉優さんになんてことを・・。本当にすいませんでした」

「いえ、大丈夫です」

「もう今日は店を閉めましょう。樹里ちゃんもこのまま上がって大丈夫ですよ」

「はーい!お疲れ様でしたー」

ニヤニヤと笑いながら樹里ちゃんはエプロンを外してスタッフルームへと下がっていった。

そして2人きりになった店内に不思議な空気が流れた。

これは私は帰る空気じゃないよね。

店内にカチャカチャと皿洗いの音だけが響いてる。

「あの・・お手伝いしましょうか?」

「大丈夫ですよ、もう終わりますから。もう少しだけ待っていてもらえますか?」

「はい」

コクコクと首を縦に振って、無言で片付けている安藤さんをただ見続けた。

そしてその後すぐに洗い物も終わりカウンターから出て来て私の隣の席に座った。

そのまま私の顔を見て、「今日は前原が失礼な事をしてすいませんでした」と言ってきた。

「そんな・・・大丈夫ですよ。それより安藤さん怒っていますか?」

「前原にですか?もちろん怒ってますよ」

「いえいえ、私にです」

私が答えると安藤さんは「え?」驚いて見せて、私も同じく「え?」と返した。

「茉優さんにですか?まさか怒るわけありませんよ。ん・・でも、心配にはなります」

「心配ですか?」

「はい、心配です。最近茉優さんはいろんな人に好かれていますからね」

「え?私がですか?」

突然安藤さんが言い出したことに戸惑いを感じた。

私が好かれるとか、そんなの心配する必要なんてないのに。

それなのに安藤さんは私の左頬を親指で撫でながら言った。


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