オフィス・ラブ #Friends
堤さんは、まず馬券の種類を教えてくれた。

単勝、複勝、枠連、馬連、馬単、3連単…といきなり詰めこまれるけど、説明が端的でわかりやすいので、ついていける。



「最初は、単勝と馬連だけ買おう。それで十分楽しめるから」

「1位の馬と、順番は問わず、1、2位の馬を当てるんですね」



新聞に目を落としたまま、いい子だ、と頭をなでてくれた。

さっき、ついでに取ってきたらしいマークシートの記入票を、ばさっとあたしのひざに置くと、読んでいた新聞を持たせてくれる。



「まずは第1レースだ。この中から、どれでもいいから1頭選んで」

「どういう基準で?」

「この予想の意味は、だいたいわかるだろ。それを参考にしてもいいし、ただの好きな数字でもいい」

「じゃあ、5」



5ね、と堤さんが横から手を伸ばして、あたしの開いてる新聞の、5番の馬の横に二重丸を赤ペンで書いた。


前にも思ったけど、この人、独特のいい香りがする。

なんだっけなあ、嗅いだことがある匂いのような気がするんだけど。



「あと2、3頭選んで」

「1と6と、16」

「早いね」

「誕生日なの」



なるほどね、と今度はその3頭の横に一重丸をつけてから、おもむろにあたしを見る。



「今日じゃん」

「そうです」

「言おうよ」



言おうよったって…。

知ってて誘ってくれたって可能性も、考えてたんだけど。

そう言ったら、あきれたように言われた。



「言われてないものを、知ってるわけがないじゃないか」



そこは、いばるんだ。

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