オフィス・ラブ #Friends

「27歳?」

「そうです」

「若いなあ」



言うほど変わらないじゃん。

30とか、31とかでしょ、確か。



「もう31だよ、4月だから」

「えっ、先月だったの」



言おうよ、とマネすると、やけに楽しそうに笑われた。



「初旬だから、まだ話したこともなかった頃だよ」

「新庄さんと、丸一年違うんだ」

「そう。あの男が、学年の中では、ほぼ末っ子とか、笑っちゃうよね」



確かに笑っちゃう。

新庄さんの誕生日に、彼が恵利たちを邪魔したという話をふたりで思い出して、また笑った。

そんな怪しい電話に、真面目に出てしまう恵利が最高に可愛くて、おかしい。

そのおかしさに気づいてないのは、恵利本人くらいだ。



この人、つかみどころがないとか、わかりにくいとか、言われてるみたいだけど。

案外、そうでもないと思う。

とりあえず、好きな子はいじめるタイプでしょ。



さて、と堤さんが、さっきあたしのひざに置いた記入票を取りあげる。



「あとは、この4頭で、流すか、ボックスにするかだね」



言いながら、新聞にさっと図形を描く。



「ボックスは、こんなふうに、4頭の全組みあわせを買うってこと。流すっていうのは」

「1頭を起点にした、ツリー構造だ」

「そう、4頭なら、ボックスでいいかもね。はい、組みあわせは何通り?」



いきなり授業みたいに指名されて、はっと背筋が伸びた。

なんだっけこれ、高校数学だな。

えーと、順番は気にしなくていいんだから。



「4C2だ。6通り」

「正解」



よくできました、とまたぐりぐり頭をなでてくれる。

なんかバカにされてる気がするけど、まあいい。

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