オフィス・ラブ #Friends
マークシートの記入は、予想外に難しく、なるほどこれは「練習」が必要だと納得した。

5番の単勝と、1、5、6、16の馬連ボックスをなんとか買ってみる。

そのマークシートを持って、建物を出て、今度はパドックへ行く。

よくテレビで見る、馬が縦列でくるくるしてる、あれが目の前にあって、ちょっと感動した。

あたしは乗馬をやっていたので、馬自体はすごく好きだし、ちょっとは知識もある。

そう言ったら、見込みがある、と堤さんは嬉しそうに笑った。



「気に入った子がいたら、追加しなよ」

「8番の栃が、可愛い」



人ごみでよく見えないため背伸びをしていると、たいして気の毒そうでもない声がする。



「抱きあげてあげたいけど、さすがにね」

「おかまいなく、慣れてるんで」



女の小さいのは、損よりは得をするほうが多いとあたしは思ってきたけど、不便なことは確かにある。

たまにある、やけに短い吊革とか、いったい誰が基準なのって思うし。


とりあえず、あの栃栗毛を応援しようと、あたしは持っていた単勝の投票カードに、8番を100円、と追加した。




「当たんないもんですねー」



芝生に座ってがっくりと肩を落とすあたしを、隣にあぐらをかいた堤さんが、くすくすと笑う。


ぐるりをコースに囲まれた、この中央の敷地は、子供の遊び場あり、芝生ありの、憩いの場だ。

競馬場って、こんなところもあるんだ。

建物内も綺麗だし、完全分煙だし、女性トイレもしっかりあるし、思ってたのと全然違う。

完全に、レジャー施設じゃん。



「俺は、枠連が来た」



にやりと笑って、さー次、と新聞を見る。

くそお。

ハマるな、これ。

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