オフィス・ラブ #Friends
駅を降りて、ひとりでマンションに向かう。

まだ、全然明るい。


アウトドアとインドアを一緒に楽しんだような、得した気分の一日だった。

早くから始まって、こんな時間に終わって、競馬って意外と、健全だ。

それよりも、あたしたちの健全さのほうに驚く。

今どき高校生だって、もう少し何か、するだろうに。




こりゃ寝ちゃうよなあ、なんて言いながら芝の上でごろごろしていた堤さんは、第9レースが始まる頃になると、いきなりしゃっきりして、メインレースの予想を立てはじめ。

2強の女王対決だとかドバイがどうとか言いながら手堅いレースを手堅く当てて、一日の収支がトントンより少しプラス、くらいのところに、器用に持っていった。

あたしはビギナーズラックで、最後のレースに思いつきで賭けた三連複が、なんと100円を2万円にしてくれた。


競馬場を後にする時、彼は、これから仕事なんだとすまなそうに言った。



「ごめんね、夕食をごちそうしたかったんだけど、どうしても無理で」



あたしは、明らかに自分ががっかりしているのを感じていたので、特にそれを隠さずにいたら、笑われた。

もうけたぶんで、あたしがごちそうしようとまで考えてたのに。


駅へ向かう人たちと一緒に、横断歩道を渡りながら、ふと堤さんが言った。



「誕生日に来てくれたってことは、ほんとにもう大森さんと終わってるんだね」

「今ごろ!?」



さすがに大きな声が出た。

知ってて、近づいたんじゃなかったの?

そう言ったら、言われないものを知ってるわけがない、とまたいばられる。

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