オフィス・ラブ #Friends
「あたしのこと、ほんとに好きなんだね」
「好きだよ」
なんで? と訊くと、なんでそんなこと訊くの? と問い返される。
指に煙草を挟んだ裸の腕が、枕元に伸びる。
すらりと、しなやかで、でも男の人の腕。
目の前に、喉と鎖骨が見える。
綺麗だけど、やっぱり男の人だ。
「あたしも、堤さん好きだけど」
「『堤さん』?」
だって、雄じゃない時は、やっぱり堤さん、のほうがしっくり来る。
そう言うと、雄、と苦笑された。
「でもまだ、キスしてって言えないでしょ」
「言えない」
「じゃ、まだまだだね」
言いながら、煙草を持っていないほうの腕であたしの頭を抱いて、髪にキスを落としてくれる。
まだまだなんだろう。
あたしも、そう思う。
でもそれって、今後増えていくものなの?
こんなふうにしてたら、いつの間にか埋まってくものなの?
堤さんは、そんなんでいいの?
あたしはまた、誰かを待たせることになるの?
堤さんは、あたしの考えがわかったみたいに、ベッドにほおづえをつきながら、優しく笑って。
「ゆっくり考えれば、いいよ」
そう言ってくれた。
でもね、あたしが嫌なの。
「これまでなら、すぐわかったのに」
一度寝たら、ぱっとひらめいたのに。
この人だ、とか、これは違う、とか。
なんで今回は、わからないんだろう。