オフィス・ラブ #Friends
「俺はこういうのも、嫌いじゃない」
「じゃ、あたしが他の人と何かあったりしても、許す?」
「許すとか許さないとか、言える立場じゃないからね」
ふっと煙を吐きながら、笑う。
そういうもんか。
じゃあ、比較のために、試してみようかなあと考えながら、その横顔を眺めていると、いきなりおでこをバチンと指で弾かれた。
「痛あ!」
「変な気、起こすんじゃないの」
えっ、なんでわかったの。
痛む額を押さえるあたしを、ほおづえ姿の、なんかちょっと悪い微笑みが見すえる。
「何するかわかんないよ、俺」
…全然許してないじゃん。
そう文句を言うと、男心は複雑なの、と煙草をくわえた口が笑った。
よく言うよ。
「我慢の効かない末っ子ってだけでしょ」
「お互いさま」
楽しそうに笑って、抱きしめてくれる。
煙草、消してよ、と言うと。
素直に枕元の灰皿で、消してくれた。
あたし、考えなきゃ。
気持ちいいからって、こんなことくり返すのは、バカのすることだ。
この人と、どうしたいのか、はっきりさせなきゃ。
ああでも、この人は。
あたしがそうやって考えだすと、すぐにそれを見透かして。
何も考えられないように、溺れさせる。
自分でもあきれるくらいの、甘えた声が出て。
普段から温度の低い、彼の身体が、温まってくるのを感じる。
あたしはそれが、どうしようもなく嬉しくて。
くそお。
頭の中で、自分を罵った。