オフィス・ラブ #Friends
畳に座って、寝室内のインテリアを眺める。

黒いデスクに、ガラスのテーブル、ベッドも黒。

結局、純和風なのは畳だけなんだけど、全体的に和モダンて感じにまとまってる。

そもそも、押入れじゃなくてクローゼットだし。

ほんと、面白い。

デザイナーズマンションみたいにやりすぎてなくて、あくまで住みやすそうだ。

リビングダイニングは、普通の洋風。


ベッドの上で壁に寄りかかって、座るのと寝るのの間くらいの、くつろいだというよりだらしない姿勢で携帯をいじっている彼は。

紺のボーダーのポロシャツにチノパンという恰好で、口には煙草をくわえていて。

完全に、ただの兄ちゃんだ。


ほんと、スーツ着てないと若くなっちゃうなあ。

そして、会社ではそんな様子を見せないくせに、実はけっこうなヘビースモーカーであることを知った。



「仕事?」

「すぐ終わるから」



あたしもベッドに上がると、携帯を持っていないほうの手で、すぐに抱き寄せてくれた。


ここからリビングのテレビが見られるので、電源をつけるけど、面白い番組がない。

チャンネルを次々に変えてたら、用事が終わったらしく、リモコンを取りあげられた。

録画してあったらしい、テニスの国際大会の男子決勝を再生する。

あたしこれ、生放送見てた。



「テニスする人?」

「ずっとやってた。ひじ壊しちゃって、もう本気でできないけど」



あたしも中高テニス部だ。

中学は軟式だけど。

そう言うと、じゃあそのうち一緒にやろう、と楽しそうに笑ってくれた。

でも聞いてみたら、インストラクターのバイトをしてたって言うから、一緒にやるってレベルじゃないんじゃないだろうか。

その時、灰を落とすついでに、彼がヘッドボードの引き出しから眼鏡を取り出したのに、びっくりした。

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