オフィス・ラブ #Friends
「目、悪いの」
「かなり悪いよ」
そう言って、金の細いフレームの眼鏡をかける。
じゃあ、いつもはコンタクトだったのか。
「度が強いから、眼鏡でデスクワークすると気持ち悪くなっちゃうんだよね」
弱くすると、遠くが全然見えないし、とテレビを見ながらぼやく姿が、新鮮だ。
「似合うよ、たまにそれで出社すればいいのに」
「そう? でも俺が人前で眼鏡してたら、気合い入ってない時だから、覚えといてね」
「気合い…」
もったいない。
眼鏡をかけると、顔の柔らかさが消えて、知的でクールな部分が前面に出てくるのが、すごくいいのに。
けど、やけに顔の近くで携帯いじってるな、と思ってた違和感が、これで解消された。
「今日は、気合い入ってない日?」
「そんなことないけど、目がつらくて」
「昨日、遅かったの」
また、無理して会ってるんじゃ、と思って問い詰めてみると、案の定、徹夜明けだった。
煙草を挟んだ残りの指で、さらりとした髪をかきあげながら、少しくたびれたように息をつく。
「今度のCF、楽曲がオリジナルでさ。トラックダウンに、ひと晩かかった」
「じゃあ、寝てなきゃダメじゃん」
「午前中、寝たよ」
そう言って、髪にキスを落としてくれる。
なんでそこまでして、あたしといてくれるんだろう。