オフィス・ラブ #Friends
これまでで、彼の性格は、だいぶつかめてきていた。

わかりにくいと思われてるみたいだけど、知ってみれば、それほどでもない。

気まぐれに見えて、実は彼なりにちゃんと基準を持って、切り替えている。

ただその基準が自分勝手だから、読みづらいだけだ。


そして、最終的に越えられるとわかってる障害なら、高いほうがいい、という考えのあまのじゃくでもあり。

そのへんの攻撃的で挑発的な性格が、合わない人は合わないんだと思う。

本人が、誰からも好かれたいとはこれっぽっちも思っていなくて、時にものすごく感じ悪くもなれるもんだから、なおさら。


と、ベッドに置いていた堤さんの携帯が震えた。

すばやく煙草を灰皿でもみ消して、携帯を拾うと、堤です、と仕事用の声で出る。



「ああ、うん、助かったよ、ありがとうね」



この口調は、相手、女だな。

耳をすますとまではいかないけど、なんとなく様子を探りたくなって、顔を寄せる。



「もちろんするよ、今度、食事でも」



なにっ。

思わず見あげるけど、無視される。

主に仕事の話と、少し周囲の人間の話をして、じゃあねと通話は終わった。



「そんな顔する権利、あると思ってるの」



閉じた携帯であたしの頬をぴたぴたと叩きながら、堤さんが意地悪く見おろす。

ないです、わかってます。

けどあなたには、あたしを好きと言った以上、他の女にいい顔しない義務があると思います。

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