オフィス・ラブ #Friends

「その3つ下に、下の兄貴がいて。俺だけ離れて生まれたんだよ」

「恵利んちみたい」

「へえ。あのふたりは、いかにも兄と姉って感じがするよね」



するする。

しっかりしてるくせに、どことなく不器用で抜けてるところとか、まさに長男長女だ。

世界はきっと、ああいう人たちが支えて、末っ子が回してる。

そう言ったら、同感、と堤さんが笑った。




こういう行為をしつつ、キスだけしないというのは、なかなか難しいもので。

これまでに何度か、彼が思わずといった感じであたしにキスをしかけて、危ない危ない、と言って急に方向転換する様子を目にしていた。


そのたびにふたりで笑って、言え、言わない、の応酬が始まる。

もういっそ、向こうが寝てる間にしちゃおうかなといつも思うけど、だんだん勝負ごとめいてきたので、フェアじゃない気がして、こらえていた。



「眼鏡なくて、見えるの」

「彩なんか、目つぶってても気持ちよくできるよ」



なんだその、わけのわからん自負は。

身体にキスを落とす頭を胸に抱くと、腕の内側に触れる髪が、さらさらと気持ちいい。

それを指で梳くと、彼が満足したような吐息を漏らして、目を閉じる。

自分こそ、猫みたい。


でもこの人は、猫と見せかけた、犬だな。

惚れたらとことん、でもちょっとプライドが高くてひねくれてる、高級な大型犬だ。



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