オフィス・ラブ #Friends
いつまでだって待つと言ってくれた彼に、それじゃ、あたしがつらいと伝えた。

もうどうやっても無理だから、離れたいと言ったあたしを、最終的に彼は許して。

これまで、楽しかったね、と言ってくれた。


うん、とうなずくあたしの顔は、たぶん相当なしかめっつらだっただろう。

涙をこらえるのに必死だったから。


淳さんは、それを見ないふりして、先に帰ってくれた。




「大森さんが、路地から飛び出してきたから、何かと思って」



煙草を吸いながら、思い出すように言う。

それでのぞいたら、あたしがいたわけか。


でもあたし、あの時は耐えきったから、泣いてなかったはずなんだけど。

そう言うと、堤さんは軽く首を振って。

柔らかく微笑んで、あたしを見た。



「泣いてたよ」



あたし、あの時。


もう誰も、あたしを好きにならなきゃいいって思ってた。

自分勝手で、子供で、口ばっかり達者で。

そんな自分を、改める気もなくて。


愛されるとか、愛するとか、そんなのあたしには、一生早いんじゃないかって。


誰もあたしのことなんか、気にしなきゃいいのに。

そしたらもう、誰も傷つけなくてすむのに。


そんな勝手なことを、考えてたんだけどね。

そんなあたしを、見ててくれた人が、いたんだね。


隠したものまで、見つけてくれた人が。

いたんだ。



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