オフィス・ラブ #Friends


「今、どのへん?」

「青山あたりかな」



泣いてるうちに、終電なんてとっくに終わっていたので、もちろんあたしの持ちでタクシーを拾おうと提案したら、せっかくだから歩こうよ、と堤さんが立ちあがった。



『歩くって』

『10km足らずだよ、ゆっくり歩いても、2時間かからないでしょ』

『やったこと、あるの』

『あるわけないだろ、そんなヒマなこと』



吐き捨てられて、あたしがそんな態度とられる流れだったかなあ、と首をひねる。

まあ、面白そうだし、行けるところまで行って、疲れたらタクシーにすればいいやと、乗った。

続いて立ちあがったあたしに、堤さんが手を差し出す。

素直に手を乗せると、それを握って、歩きだした。


あれっ。

手をつなぐのなんて、初めてじゃん。




青山ってことは、4分の1くらい来たのか。

頭の中に路線図を描いて、計算する。

けっこう順調だなあ。


もう深夜といっていい時間だけど、さすが不夜城、車の通りはそこそこある。

広い歩道を、手をつないで、のんびりと歩く。



「今日は、サービスデイ?」



うん? と振り返る顔に、つないだ手を掲げてみせる。

ああ、と笑って、それまで子供みたいにつないでいた手を、指を絡めなおしてくれる。

ほんと、サービスデイだ。

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