オフィス・ラブ #Friends
「じゃ、具体的なところを詰めよう」
ゆうべ、取引がまとまった後みたいなことを言い出した堤さんに、いや、和之に、あたしはもう寝なさいと命令して。
ただでさえ睡眠不足の続く生活を送っている彼は、それでも渋々といった調子でベッドに入った。
あたしももぐりこむと、すぐに腕に抱いてキスをくれる。
どれだけしても足りないって感じで、ひっきりなしに唇を合わせてくる。
あたしも同じ気持ちだったので、背中に腕を回して、散々応えた。
挨拶するみたいに、軽くついばんだと思ったら、探るように少し深くなって。
柔らかく舌先を触れあわせては、また軽くついばむ。
こりゃ、終わんないな。
「これも、策略だった?」
「何が」
「やめられる気がしないよ」
2か月以上、焦がれたキスは。
一度始まったら、もうとめる方法がない。
話す間も惜しく、ひたすら重ねる。
ううん、とその合間に声がした。
「ただの意地」
でも泣かれたら、くじけた。
笑い声すら、お互いの唇で飲みこんで。
あたしは結局、終了時を覚えていないので、どうやらそのまま眠りこんだらしかった。
「今後、堤さんと呼んだら罰金をとります」
「は…」
そう通達されたのは、今朝で。
一度家に戻るために、早くに部屋を後にするあたしを、玄関先で見送った堤さんが、いや和之が、壁にもたれて尊大に言い放った。
「いかほどでしょう」
「一回1000円」
お札!?
普通ワンコインでしょ、そういうのって。
けど、そういうのがないと、なかなか切り替えは難しいことは予想できたので、重々しくうなずいて、承った。