オフィス・ラブ #Friends
「今日くらい、早く帰れないの」
「うーん…」
ぼんやりとほおづえをついて、お父さん、何してる人? と訊いてきた。
いきなりだな。
昨日の話を思い出したのかな。
「もういないの、中学の頃、他界して」
「そうなんだ」
少し目を見開いて、手から顔を浮かす。
「それは、寂しいね」
ふう、と煙を吐きながら、穏やかに言う。
ああ、こういうところ。
好きだなあ。
よく、この話になると、ごめんねって言われるんだけど、あたしはそれが残念で。
大好きな父親の話をできる機会は、むしろ嬉しいのに、まるでそれがタブーみたいに謝られちゃうと、悲しくて。
そういえば恵利は、初めてこのことを話した時、どんなお父さんだったの? と訊いてくれたんだった。
そういえば、身辺調査つながりで、あたしも訊きたいことがある。
「これまで、つきあった女の人って、どのくらい?」
「つきあうって、どのへんまで入れて?」
…あ、もういいや、だいたいわかった。
なんだろな、恵利が匂わせた感じだと、新庄さんも、相当しっちゃかめっちゃかな女遍歴みたいなんだよな。
あの人、そこまでには見えないのに。
いや、言われてみれば、見えるか。
なんでふたりがふたり、こんななんだろう。
純粋に訊き返しただけだったらしい彼は、不思議そうにしながらも、のんびりと食後の一服を楽しんでいた。
「今日、なるべく早く帰るからさ」
おいでよ。
優しく微笑む顔に、うん、とうなずく。
でも、早く寝かすからね。