雪見月
「次を右です」


はい、と頷いた彼女がそっと右を向いた。


合わせて俺の足も何とか持ち上げる。


肩を貸してもらいながら歩くのは楽だ。


時間がかかるが、それでも俺一人よりずっと速い。




もう真っ暗で肌寒くなってきた。


そろそろ彼女は帰った方がいいんじゃないだろうか。


ふと気になる。


「あの、高校生ですよね」

「……そうですが」


彼女は訝しげにこちらを見た。


その目は少し俺を警戒している、…ん!?


予想外の事態に慌てて弁解を試みる。


「違うんですその、変な意味では決してなくてですね、遅くなったらご家族が心配されるのではないかと思って……! 女性ですし、夜ですし!」


警戒は今だ解けない。


彼女の動きがまだ固い。
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