雪見月
「私は、無責任な手助けは助けたことにならないと思います」


少し唐突なそれは意思表示。


『遅くなったらご家族が心配されるのでは……女性ですし、夜ですし』


先程俺はそう言った。


おそらくはその返事だと思われた。


意図を汲めば、


時間を聞いたけどそれでもここにいる、

いいから心配しないで、


ということだ。


……まだ帰る気はないらしい。


俺にとっては大変ありがたいが、いいのだろうか。


でも、今のは多分念押しなので、気にしない方がいいんだろうな。


「両親にも連絡しました」


明らかに苦し紛れの言い訳にもきちんと返事をくれる辺り、やはり律儀な人である。


「重ね重ねすみません……」


謝ることしかできない俺が情けない。

謝らないよりは、なんて、きっと甘えでしかないのに。


言ってしまってから気づいても遅い。


結果として黙り込んだ俺の心情を、どう斟酌したのか。


例によって正確に理解したのだろうその人は、ただ静かに頭をもたげた。
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