雪見月
……こういうとき、救急車って呼んでもいいものなのか?


まず真っ先に浮かんだのはそれだった。


最近救急車をタクシー代わりにする輩がいると聞く。


タクシーは高いからだろう。


足が痛いくらいで呼んだらその人たちと同列になるんじゃ、


……嫌だ嫌だ。

呼んではいけない。


本来は呼んでもいいのかもしれないけど、判断に困るんだから呼ばない方がいいだろう。


となると徒歩しかないけど、歩けんのかなぁコレ。


支障ありまくりじゃないだろうか。

まず立てないんだけど。


初動にすら確実に入れないこの足では、一歩たりとも前に進めまい。


せいぜいがとこ後退

(片方だけ震える足でゾンビばりにのそのそ後ずさり。ホラー)、


良くてもほふく前進

(決して上は見ない、前を見る。変態ではなく紳士である故に)。


……何ということだろう。

退化している。


長い歳月を経てようやく進化した人類の歴史よ、一瞬のうちにどこ行った。


蘇れ俺の身体能力。頼むから。




俺は冷静に自己分析した。


結論、かなり動揺していると見える。
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