雪見月
始まりは雪のようにまっさらで
「これ、ストラップです。あのときは本当にありがとうございました」
慎重に保管していたからだろうか、買ったときと何一つ変わらない包装に安堵する。
渡すものがよれていては意味がない。
お辞儀をしてしっかり目を見て渡すと、いえ、その、と覚えている彼女らしくなく目を泳がせた。
「お互い様ですから」
「俺の方だけ得してますよ、お互い様とは言えません」
彼女の優しさ故の台詞だろうと思ったのだが、違ったらしい。
本当にお互い様なんです、と彼女は真剣に首を振った。
「え?」
身に覚えがないことだった。
対応できなかったのは仕方ない。
間抜けな顔は大目に見て欲しい、と思う。
「覚えて……いらっしゃらない?」
訝しげに聞かれても、そうだ、としか言えないので、素直に頷く。
「はい、……あっ、いえ」
彼女は覚えているのなら、何か印象に残ることなのかもしれない。
失言したのに気付き、慌ててすみませんと付け足した。
「そう、ですか」
彼女は少し残念そうに笑った。
「……そこの信号で」
指差されたのは通学路の信号――俺がこけた、あの。
慎重に保管していたからだろうか、買ったときと何一つ変わらない包装に安堵する。
渡すものがよれていては意味がない。
お辞儀をしてしっかり目を見て渡すと、いえ、その、と覚えている彼女らしくなく目を泳がせた。
「お互い様ですから」
「俺の方だけ得してますよ、お互い様とは言えません」
彼女の優しさ故の台詞だろうと思ったのだが、違ったらしい。
本当にお互い様なんです、と彼女は真剣に首を振った。
「え?」
身に覚えがないことだった。
対応できなかったのは仕方ない。
間抜けな顔は大目に見て欲しい、と思う。
「覚えて……いらっしゃらない?」
訝しげに聞かれても、そうだ、としか言えないので、素直に頷く。
「はい、……あっ、いえ」
彼女は覚えているのなら、何か印象に残ることなのかもしれない。
失言したのに気付き、慌ててすみませんと付け足した。
「そう、ですか」
彼女は少し残念そうに笑った。
「……そこの信号で」
指差されたのは通学路の信号――俺がこけた、あの。