雪見月
「『青ですよ』って」
そう、
確か俺がそう言ったのは、白の、長いマフラーをした、
「『信号、青ですよ』って私の肩をそっと叩いて、私が気付いて顔上げるまで待っててくださって」
ボブの黒髪。
「服見たら学ランで。この辺、学ランの高校ないから、受験生かなって」
優しい心遣いなんて、どこにでもある、ただの日常ですけど、と彼女は綺麗に笑った。
「でも、それだけで私にとっては充分だったんです」
あの日の奔流が止まらない。
忘れたくないと叫んでいる。
叫び声をあげて唸っている。
『きっと会えないから』。
そんな、たった十文字だけの理由で堰き止めていたのに、
やっと奥に仕舞い込んだのに、
必死に抱き留めた思いは二年越しだったなんて、こんな偶然があるかよ。
そう、
確か俺がそう言ったのは、白の、長いマフラーをした、
「『信号、青ですよ』って私の肩をそっと叩いて、私が気付いて顔上げるまで待っててくださって」
ボブの黒髪。
「服見たら学ランで。この辺、学ランの高校ないから、受験生かなって」
優しい心遣いなんて、どこにでもある、ただの日常ですけど、と彼女は綺麗に笑った。
「でも、それだけで私にとっては充分だったんです」
あの日の奔流が止まらない。
忘れたくないと叫んでいる。
叫び声をあげて唸っている。
『きっと会えないから』。
そんな、たった十文字だけの理由で堰き止めていたのに、
やっと奥に仕舞い込んだのに、
必死に抱き留めた思いは二年越しだったなんて、こんな偶然があるかよ。