雪見月
小走りで駆け寄る。


髪がマフラーの上で跳ね、制服のスカートが大きくはためいた。


こういうとき、スカートは邪魔だ。


もっと急ぎたいのに急げない。


私が駆け寄る間にその人はやっとのことで体を起こして、眉根を寄せた。


どこか痛んだに違いなかった。


鮮やかな青色のコートに包まれた体を辛そうに支える手は素手で。


……手袋、忘れたんだろうなぁ。


指先と言わず、とにもかくにも真っ赤なその手のひらが雪に目立つ。


寒そうだな、と思わずこちらが震えてから、既視感を覚えた。


「あれ……?」


近づく背中を知っている。


振り向かなかった背中だと知っている。


追いかけたかった、

お礼もまだ言えてない、


この人は彼だ。


魔法使いはやはり魔法使いで、あの日の人が、忽然と姿を見せてここにいる。


間違えようもなく、おぼろ気な記憶と一致して細部を補完した。


背がとても高くなっているから顔が見にくいけど、確信する。


携帯を探しているようなので見つけて声をかけてみると、変わらない低い声が聞こえて思わず固まり、笑い返すことしかできなかった。


当時声変わりは既に終わっていたらしい。


……今の、不自然じゃなかったよね。大丈夫だよね。
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