雪見月
微妙に気にしつつ、すぐさま近場のコンビニへ走った。


ああもう、信号早く変わって。

何で赤なの、こんなときに限って。


「急がなくちゃ……!」


彼を助けたい。


その一心で、荒い息で酸素があまり体に回らないながら、必死に足を進めた。


苦しい肺に無理矢理酸素を送ってなだめる。


避けさせる形になってしまいながらすれ違った、周りの通行人に頭を下げ。


申し訳なさを感じる彼らの奇異の視線は、不思議と気にならなかった。


確実に元気になって欲しい。


彼が良くなるならば出費も痛くない。


駆け込んだコンビニで店員さんに驚かれ、同様に頭を下げつつも歩調は緩めない。


小さめの赤い籠を右手で引っ掴み、医療品のコーナーに向かう。


「あ、…った」


もれた呟きごと呼吸に変えて、帰りに備えて小休止。


どんどん必要そうなものを取っていく。


途中でふと気付いて鞄から財布を探ると、友達とお揃いの財布に五千円は入っていた。


小さな買い物にしては潤沢な資金だ。まだかなり余裕がある。


じゃあこれも、と籠に入れる商品は増えた。
< 71 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop