となりの専務さん
「……ふふ。顔、赤いよ」

「ま、まだ恥ずかしいんです……」

「まだ恥ずかしいの? この先もずっとそう言ってそうだね。でも、慣れちゃうよりいいかも。ずっとその反応を見続けていけるから」

専務はそう言って、私の髪をくしゃっと撫でて、玄関を出ていった。



……ああ、幸せだなぁ。

専務は私にいっぱいいっぱい幸せをくれる。

私はちゃんと専務に幸せだと感じてもらえてるのかな。
少しでも多くの幸せを感じてもらえるように、もっと立派な人間になろう。


でも今は、





やっぱり幸せだなぁ〜ってとにかく思ってしまう!







そんなある日のことだった。


私は仕事の関係で、月野さんと鹿野さんといっしょに、書類をもってオフィスを歩いていた。


すると月野さんが。


「……あ。ストップ」

そう言って歩くのをやめ、私も月野さんの横で同じく足を止める。鹿野さんも同じく立ち止まった。


(あ……!)

突き当たりから……社長が、こちらへ向かって歩いてきてた。

私たちは通路の脇に避けて、頭を下げて社長が通り過ぎるのを待っていた。


……みんな、社長とすれ違う時はドキドキする、なんてよく言ってる。
やさしい社長だって周りの人たちは言うけど、それでもドキドキしてしまうのはムリないと思う。


……でも。
私はべつの意味でドキドキしていた。



だって専務のお父さんだし‼︎ か、彼氏のお父さんだし‼︎ それでもって会社の社長なのだから、ほんとにドキドキして仕方なかった。
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