となりの専務さん
「す、すみません。騒がしい家族で……」

私は専務に謝った。
せっかくいっしょに実家まで来てくれたのに、入院でも手術でもなんでもなくただの食あたりだったし、なんか騒々しいし……。


でも専務は。

「ううん。お父さん元気そうでよかったよ。お姉さんも元気な人だね」

と、やさしくほほえみながらそう言ってくれた。


「……はいっ」

やっぱりなにより、お父さんが元気そうで(お腹は痛いかもしれないけど)ほんとによかった。

でも、専務がいてくれなかったら、私はただあたふたするだけで、どうしたらいいかわからなかったと思う。


専務、ほんとにありがとうございます……。



ただ、


「大樹って元カレ? 家族公認だったんだね」

と言った時の専務の笑顔はなんだか怖くて、社長に似ていました……。
ち、違うんです! 家族公認っていうか、付き合ってた時に一度だけ家に来たことがあっただけです……!



ーー……

五分後、お姉ちゃんから了解を得て、専務といっしょに居間に入ると、居間の真ん中に置かれたテーブルを囲むようにお姉ちゃん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんが座っていた。
正面にお姉ちゃんとお父さん、向かって左側におじいちゃん、右側におばあちゃんがいたので、手前側に専務といっしょに座らせてもらった。

東京のうちの実家は、借金は関係なく昔から狭い家だったけど、おじいちゃんとおばあちゃんが暮らすこの家は昔から割と広くて。大人が六人揃っても、窮屈感とかはなかった。
まあ、専務のおうちはもっと広かったけど……。


「あ、改めまして、今お付き合いをしている響さんです。お父さんのことを心配して、いっしょに来てくれました」
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